「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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埼玉のタビネコさんから、「姥子問答」に関する論文が ! [2]

ですが…。

そもそも秀明館 (というか天山) は、「秀明館に夏目漱石が宿泊した」とハッキリ言及しているわけではない…ようなんです。
天山発行の書き物を読む限りでは。

温泉 (源泉)
宿 (秀明館)
建物

はそれぞれ区別して考察すべきだと思うのですが、これまでの話は、
宿の開業時期にまつわる話。
また、J・KOYAMA様とトラ猫さんの「姥子問答」 での興味の焦点も、
「夏目漱石は姥子で何という名のどんな宿に宿泊したのか ? (つまり ◆法廚世隼廚い泙后
一方、天山が発行している瓦版 (見開きA2版を真ん中で折ったミニ新聞形状の読み物) によると…

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◆湯治郷の瓦版 みだれかご (通巻第49号臨時増刊 2006年改題版)



現在の秀明館の源泉は二つ。漱石が『吾輩は猫である』にも書き、伝説の舞台にもなっているのが元箱根4号泉。自然湧泉である。
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はっきり書かれているのは あくまで「 温泉 (源泉)」についてです。
ちなみに上の抜粋文の「伝説の舞台」というのは、金太郎と姥の伝説のことです。
また、「秀明館の源泉は二つ」とありますが、元箱根4号泉ではないもう片方の源泉は元箱根20号泉といい、後年のボーリングによる揚湯泉になります。天山のパンフ「漱石が逗留した明治すら…」という記述にしても、おそらくこの元箱根4号泉という自然湧泉を中心とした姥子の温泉場への逗留を指しているのではないかと思われます。

冒頭で、「明治20年代から昭和40年代に入るまでこの地に温泉宿は1件のみ」と申しましたが、『箱根温泉史』の巻末には 箱根温泉旅館名鑑 という資料が掲載されています。
文化8年 (1811) 〜 昭和60年 (1985) の各時代 (古い時代は30数年おき、明治半ば以降は10 〜 20年おき) の温泉旅館名と宿の主人名が記載されたものです。
これに秀明館が初登場するのが明治40年、以降 昭和30年時点まで姥子には秀明館1軒のみ。それが昭和45年時点で 4軒、昭和60年になると 9軒。一気に増えています。
この間何があったかというと、温泉掘削ラッシュ (昭和35年 〜 昭和45年頃) です。

江戸時代や明治初頭までは、温泉といえば自然湧泉。
『箱根温泉史』によれば、箱根でも大正12年 (1923)  に掘り抜き井戸によって温泉が湧出するまでは、自然湧泉の時代とされています。
もちろん、漱石が箱根を訪れて入湯したであろう温泉は、自然湧泉のはず。
以降時代が下るにつれ掘削技術が進み、源泉数は飛躍的に増えていき、戦後観光地開発されていく過程で温泉掘削ラッシュを迎えます。

掘削が盛んになることで、既存の源泉は逆に湧出が減少したりストップしたり影響著しく…現在ではポンプによる汲み上げが圧倒的で、自噴している井戸は湯本、宮ノ下、底倉、姥子にわずかに見られる程度 (※)。

姥子でもこの時期いくつかボーリングによる温泉開発がなされ、仙石原や芦ノ湖付近の地域の別荘開発やホテルなどに利用されていますが、秀明館の自然湧泉も、湧出時期が短くなったり、夏期でも湧出が止まったりするなど、影響を受けたようです。

(※)2008年発行 特別展図録「箱根火山 いま証される噴火の歴史」
   神奈川県立 生命の星・地球博物館

となると秀明館は、姥子における夏目漱石の時代から現代まで続く自然湧泉 (元箱根4号泉) を有する唯一の温泉施設ということになるわけで、秀明館開業以前の宿についても、同一源泉の一続きの温泉場として捉えているのではないでしょうか ?
現在の秀明館は宿泊施設ではないですし、天山は「源泉至上主義」(!?) とでも言いたくなるくらい、源泉に強いこだわりを持っているようなので。

[3] に続きます。

※ 10月18日付でアップした、「湯治場の瓦版 みだれかご」の図版を、タイトルロゴのみに差し替えました。
                         (10月25日 J・KOYAMA)
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