「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第二》 寒月来宅


画/近藤浩一路


 おりから門の格子がチリン、チリン、チリリリリンと鳴る。おおかた来客であろう、来客なら下女が取り次に出る。吾輩は魚屋の梅公がくる時のほかは出ない事にきめているのだから、平気でもとのごとく主人の膝に座っておった。すると主人は高利貸しにでも飛びこまれたように不安な顔つきをして玄関の方を見る。なんでも年賀の客を受けて酒の相手をするのがイヤらしい。人間もこのくらい偏屈になれば申し分はない。そんなら早くから外出でもすればよいのにそれほどの勇気も無い。いよいよ牡蠣(かき)の根性をあらわしている。しばらくすると下女が来て「寒月(かんげつ)さんがおいでになりました」と言う。


※理学士・水島寒月のモデルとされるのは漱石門下の寺田寅彦(1878〜1935)。
漱石熊本五高時代の教え子で物理学者・エッセイスト。東京帝大大学院卒、ベルリン大学にも学んだ逸材だがあとで出てくる歯が欠けた一件(椎茸が原因かどうかは不明)や役に立たなそうな実験など大いにネタにされているようだ。
愛猫家のようで、エッセイ「子猫」(1923)では「私は猫に対して感ずるような純粋なあたたかい愛情を人間に対していだく事のできないのを残念に思う」とまで書いている。(J・KOYAMA)

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