「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第三》 鼻毛の白髪


画/近藤浩一路

「ジャムばかりじゃないんです、ほかに買わなけりゃならない物もあります」と細君はおおいに不平な気色(けしき)を両頬にみなぎらす。
「あるかもしれないさ」と主人はまた指を突っこんで、ぐいと鼻毛を抜く。赤いのや、黒いのや、種々の色が交じる中に一本真っ白なのがある。おおいに驚いた様子で穴の開くほどながめていた主人は、指のまたへ挟んだままその鼻毛を細君の顔の前へ出す。
「あら、いやだ」と細君は顔をしかめて、主人の手を突き戻す。
「ちょっと見ろ、鼻毛の白髪だ」と主人はおおいに感動した様子である。さすがの細君も笑いながら茶の間へ入る。経済問題は断念したらしい。主人はまた天然居士に取りかかる。



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