「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第三》 再び天然居士


画/下高原千歳

 鼻毛で細君を追い払った主人は、まずこれで安心と言わぬばかりに鼻毛を抜いては原稿を書こうと焦る体(てい)であるが、なかなか筆は動かない。
焼芋を食うも蛇足だ、割愛(かつあい)しよう」と、ついにこの句も抹殺する。
香一〓【〓は「火へん」に「主」】も、あまり唐突だからやめろ」と惜し気もなく筆誅(ひっちゅう)する。
 余す所は「天然居士は空間を研究し論語を読む人である」という一句になってしまった。主人はこれではなんだか簡単過ぎるようだなと考えていたが、「ええい、面倒臭い。文章はお廃にして銘だけにしろ」と、筆を十文字にふるって原稿紙の上へ下手な文人画の蘭(ラン)を勢いよく描く。せっかくの苦心も一字残らず落第となった。
 それから裏を返して「空間に生まれ、空間を究(きわ)め、空間に死す。空たり間たり天然居士。噫(ああ)」と意味不明な語を連ねているところへ例のごとく迷亭が入ってくる。



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