「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第四》 崩れた黒塀のうち


映画(1936) より

「かしこまりました。今日は土曜ですからこれからまわったら、もう帰っておりましょう。近頃はどこに住んでおりますかしらん」
「ここの前を右へ突き当たって、左へ一丁ばかり行くと崩れかかった黒塀のあるうちです」と鼻子が教える。
「それじゃ、つい近所ですな。訳はありません。帰りにちょっと寄ってみましょう。なあに、だいたいわかりましょう。表札を見れば」
「表札はあるときとないときとありますよ。名刺をごはん粒で門へ貼りつけるのでしょう。雨がふると剥(は)がれてしまいましょう。するとお天気の日にまた貼りつけるのです。だから表札は当てにゃなりませんよ。あんな面倒臭い事をするよりせめて木札でもかけたらよさそうなもんですがねえ。ほんとうにどこまでも気の知れない人ですよ」
「どうも驚きますな。しかし崩れた黒塀のうちと聞いたら、たいがいわかるでしょう」



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