「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第六》 暑い暑い3



 これで見ると、人間はよほど猫より閑(ひま)なもので、退屈のあまり、かようないたずらを考案して楽しんでいるものと察せられる。ただおかしいのはこの閑人(ひまじん)が、よるとさわると多忙だ多忙だと触れまわるのみならず、その顔色がいかにも多忙らしい、悪くすると多忙に食い殺されはしまいかと思われるほどこせついている。彼らのあるものは吾輩を見て、時々あんなになったら気楽でよかろうなどと言うが、気楽でよければなるがよい。そんなにこせこせしてくれと誰も頼んだ訳でもなかろう。自分で勝手な用事を手に負えぬほど製造して苦しい苦しいと言うのは自分で火をガンガン起こして暑い暑いと言うようなものだ。猫だって頭の刈り方を二十通りも考え出す日には、こう気楽にしてはおられんさ。気楽になりたければ吾輩のように夏でも毛衣を着て通されるだけの修業をするがよろしい。
 ――とは言うものの少々熱い。毛衣ではまったく暑過ぎる。



第六章 CHAP.6 | permalink | comments(3) | - | - | - |
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この記事に対するコメント

『火をガンガン起こして暑い暑い』の『ガンガン』は、『カンカン』ではないのでしょうか??
通りすがり | 2014/06/02 11:12 PM
ご指摘ありがとうございます。
本文担当のしろねこです。

ご指摘の通り、原文では「かんかん」です。

以下、「大辞泉」から、「かんかん」と「がんがん」の副詞としての一般的な意味合いを引用させていただきます。
(文学作品等から、実際に使用された文例を当たっての引用もすべきですが、一般的な意味合いとして適当のようなので、とりあえずコレだけで失礼します(^ ^;))

■かんかん[副]
1 金属・石などの堅い物がぶつかって出す、高く澄んだ音を表す語。「半鐘の音が──(と)響き渡る」
2 日ざしが強いさま。「真夏の太陽が──(と)照りつける」
3 炭火などが勢いよくおこっているさま。「火鉢の火が──おこっている」

■がんがん[副](スル)
1 音や声が大きく響くさま。やかましく聞こえるさま。「ドラム缶を──(と)たたく」「そんなに──言わないでくれ」
2 頭の中で大きな音が響くように、ひどく痛むさま。「二日酔いで頭が──する」
3 勢いが盛んで激しいさま。「ストーブを──燃やす」「──勉強する」

原作の「かんかん」は、「かんかん」3の「炭火などが勢いよくおこっているさま。『火鉢の火が―おこっている』」かと思われます。
が………。
これがビミョウに通じないんです、若い方々に(苦笑)
「かんかん照り」という言葉ならともかく、イマドキは「火をかんかん起こす」ことが日常ではないせいかもしれません。竈だの火鉢だのが日常生活の必須だった時代ははるか遠くですから、それ系のオノマトペが死語に近くなってしまうのも、いたしかたないのかな、と。

で、当サイトは「中学生にも楽しんでもらう」がコンセプトなので、ここでは「がんがん」の3「勢いが盛んで激しいさま。『ストーブを──燃やす』『──勉強する』」の「ガンガン」に変更させていただいてます。

「当サイトの主旨 http://neko.koyama.mond.jp/?eid=80591」にも表記しておりますが、コンセプトが「中学生でも楽しめる『猫』」ということで、原文とはちらほらと違う部分があります。
橋本 治 先生の「桃尻語訳 枕草子」とまではいかないまでも、とりあえず「猫」という作品に親しみを覚えてもらえたら、ということで。

こういう改編はイラッとくるのよね、という方には、申し訳ないですが、常用漢字でない古い漢字&旧仮名遣いなしっかりとした原文に、よそで当たっていただければ、と(^ ^;)
しろねこ | 2014/06
しろねこ | 2014/06/15 10:54 PM
丁寧なご回答ありがとうございました。

なるほど、漢字等が原文との相違が見受けられたのはそういう事だったのですね。

そこまで思慮されている事に恐縮致しました。

今一度趣旨を熟読致します。

就寝前に、楽しませてもらっております。

これからも読ませて頂きます。

拙いコメントにご対応頂きありがとうございました。
通りすがり | 2014/06/16 4:57 PM
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