「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第六》 迷亭来宅



 これでは一手専売の昼寝もできない。
 何かないかな。永らく人間社会の観察を怠ったから、今日は久しぶりで彼らが酔興にあくせくする様子を拝見しようかと考えてみたが、あいにく主人はこの点に関してすこぶる猫に近い性分である。昼寝は吾輩に劣らぬくらいやるし、ことに暑中休暇後になってからは何一つ人間らしい仕事をせんので、いくら観察をしてもいっこう観察する張り合いがない。こんな時に迷亭でも来ると胃弱性の皮膚も幾分か反応を呈して、しばらくでも猫から遠ざかるだろうに。先生、もう来てもいい時だと思っていると、誰とも知らず風呂場でザアザア水を浴びるものがある。水を浴びる音ばかりではない、折々大きな声で相の手を入れている。「いや結構」「どうも良い心持ちだ」「もう一杯」などと、うちじゅうに響き渡るような声を出す。主人のうちへ来てこんな大きな声とこんな無作法な真似をやるものはほかにはない。迷亭にきまっている。



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