「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第七》 吾輩と運動8


左の男性モデル(笑)は正岡子規。

 さて、吾輩の運動はいかなる種類の運動かと不審を抱く者があるかもしれんから一応説明しようと思う。ご承知のごとく、不幸にして器械を持つ事ができん。だからボールもバットも取り扱い方に困窮する。次には金がないから買う訳にいかない。この二つの原因からして吾輩の選んだ運動は、『一文いらず器械なし』と名づくべき種類に属するものと思う。そんなら、のそのそ歩くか、あるいはマグロの切り身をくわえて駆け出す事と考えるかもしれんが、ただ四本の足を力学的に運動させて、地球の引力にしたがって大地を横行するのは、あまり簡単で興味がない。いくら運動と名がついても、主人の時々実行するような読んで字のごとき運動は、どうも運動の神聖を汚すものだろうと思う。もちろんただの運動でも、ある刺激のもとにはやらんとは限らん。『鰹節競争』(かつぶしきょうそう)、『鮭(シャケ)探し』などは結構だが、これは肝心の対象物があっての上の事で、この刺激を取り去ると心ひかれるものがなくて興ざめして、没趣味なものになってしまう。
 懸賞的興奮剤がないとすればなにか芸のある運動がしてみたい。吾輩はいろいろ考えた。



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