「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第八》 ぐるりの事2




 この垣の外は五、六間(約11mほど)の空き地であって、その尽くるところに檜(ひのき)がこんもりと五、六本並んでいる。縁側から拝見すると、向こうは茂った森で、ここに往む先生は野中の一軒家に、無名の猫を友にして日月(じつげつ)を送る江湖(こうこ)の処士(官吏にもならず、富も名誉も望まず、平凡な生活に甘んじている人。「江湖」は「世間」の意)であるかのごとき感がある。ただし檜の枝は、吹聴(ふいちょう)するごとく密生しておらんので、その間から群鶴館(ぐんかくかん)という、名前だけ立派な安下宿の安屋根が遠慮なく見えるから、先に申したような先生を想像するのには、よほど骨の折れるのはむろんである。


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