「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第九》 主人はあばた面


画/小沢良吉

 主人はあばたヅラ(痘痕面)である。御維新前はあばたもだいぶ流行ったものだそうだが、日英同盟のこんにちから見ると、こんな顔はいささか時候後れの感がある。あばたの衰退は人口の増殖と反比例して、近き将来にはまったくその跡を絶つに至るだろうとは、医学上の統計から精密に割り出されたる結論であって、吾輩のごとき猫といえどもちっとも疑いをさしはさむ余地のないほどの名論である。現今、地球上にあばたっツラを有して生息している人間は何人くらいあるか知らんが、吾輩が交際の区域内において打算してみると、猫には一匹もない。人間にはたった一人ある。しかしてその一人がすなわち主人である。はなはだ気の毒である。


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