「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第十》 空腹になって参った


映画(1975) より

 吾輩は主人と違って元来が早起きの方だから、この時すでに空腹になって参った。とうていうちのものさえ膳に向かわぬさきから、猫の身分をもって朝飯にありつける訳のものではないが、そこが猫の浅ましさで、もしや煙の立った汁のにおいが、鮑貝(あわびがい/吾輩の食器)の中からうまそうに立ち上がっておりはすまいかと思うとじっとしていられなくなった。はかない事をはかないと知りながら頼みにするときは、ただその頼みだけを頭の中に描いて動かずに落ちついている方が得策であるが、さて、そうは行かぬもので、心の願いと実際が合うか合わぬかぜひとも試験してみたくなる。試験してみれば必ず失望するに決まってる事ですら、最後の失望をみずから事実の上に受け取るまでは承知できんものである。


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