「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
<< February 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 >>

《第拾一》 ずうずうしいぜ、おい



「やや、大変大変。そこを切られちゃ死んでしまう。おい、冗談じゃない。ちょっと待った」
「それだから、さっきから言わん事じゃない。こうなってるところへは入れるものじゃないんだ」
「入って失敬つかまつり候。ちょっとこの白をとってくれたまえ」
「それも待つのかい」
「ついでにその隣のも引き揚げてみてくれたまえ」
「ずうずうしいぜ、おい」
Do you see the boy (『ずうずうしいぜ、おい』をソラミミ的に英語変換して)か。――なに、君と僕の間柄じゃないか。そんな水臭い事を言わずに、引き揚げてくれたまえな。死ぬか生きるかという場合だ。『しばらく、しばらく』って花道から駆け出してくるところだよ」
「そんな事は僕は知らんよ」
「知らなくってもいいから、ちょっとどけたまえ」
「君、さっきから、六ぺん待ったをしたじゃないか」
「記憶のいい男だな。向後(こうご)は旧に倍し待ったをつかまつり候。だからちょっとどけたまえと言うのだあね。君もよっぽど強情だね。座禅なんかしたら、もう少しさばけそうなものだ」


「Do you see the boy」
漱石は「the」を「ゼ」と表記することが多い。この「Do you see the boy」という英文は、当時の中学用英語読本の初級編に頻繁に見られる表現。

「『しばらく、しばらく』って花道から駆け出してくるところ」
歌舞伎十八番「暫(しばらく)」などからきた劇の場面。主役が「しばらく」と言って現れ、悪人どもをこらしめる。


第十一章(最終章) CHAP.11 | permalink | comments(0) | - | - | - |
【前のページ】<< 《第拾一》 本因坊の流儀じゃ | 【TOP】 |《第拾一》 アーメン >>【次のページ】



この記事に対するコメント

コメントする










RECENT COMMENTS
MOBILE
qrcode
PROFILE