「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第拾一》 寒月の鰹節2


画/浅井忠

「実は四日ばかり前に国(郷里)から帰って来たのですが、いろいろ用事があって方々駆け歩いていたものですから、つい上がられなかったのです」
「そう急いで来るには及ばないさ」と主人は例のごとく無愛嬌な事を言う。
「急いで来んでもいいのですけれども、このおみやげを早く献上しないと心配ですから」
「鰹節じゃないか」
「ええ、国の名産です」
「名産だって東京にもそんなのは有りそうだぜ」と主人は一番大きな奴を一本取り上げて、鼻の先へ持って行って臭いをかいでみる。
「かいだって鰹節の善し悪しはわかりませんよ」
「少し大きいのが名産たるゆえんかね」
「まあ、食べてご覧なさい」
「食べる事はどうせ食べるが、こいつはなんだか先が欠けてるじゃないか」
「それだから早く持って来ないと心配だと言うのです」
「なぜ?」


※このあたりを読んでいつも思うのが「寒月の郷里っていったい何処?」という事。
モデルとなった寺田寅彦は東京の生まれであるが、軍の会計をしていた父の仕事の関係で生後すぐ名古屋、そして四国の高知へと転宅した(四国は父の出身地。この地にある寺田家墓所で寅彦も眠っている)。その後また東京、もう一度高知、熊本の五高、最終的に東京と忙しい。
鰹節が名物である、船で帰郷するというんで高知という感じが濃厚だがどうなんでしょうか。
この後、寒月がヴァイオリンを買うため彷徨するシークエンスで特長のある町名がたくさん登場しますが、漱石との出会いの地である熊本を含めた寺田寅彦ゆかりの地名を羅列しているのかな? あるいは父の仕事と考え併せ、軍施設近辺の町名じゃないかとも考えましたが・・・。(J・KOYAMA)

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