「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第拾一》 寒月の鰹節3



「なぜって、そりゃネズミが食ったのです」
「そいつは危険だ。めったに食うとペストになるぜ」
「なに、大丈夫。そのくらいかじったって害はありません」
「全体どこでかじったんだい」
「船の中でです」
「船の中? どうして」
「入れる所がなかったから、ヴァイオリンといっしょに袋の中へ入れて船へ乗ったら、その晩にやられました。鰹節(かつぶし)だけならいいのですけれども、大切なヴァイオリンの胴を鰹節と間違えてやはり少々かじりました」
「そそっかしいネズミだね。船の中に住んでると、そう見境いがなくなるものかな」と主人は誰にもわからん事を言って依然として鰹節をながめている。
「なに、ネズミだから、どこに住んでてもそそっかしいのでしょう。だから下宿へ持って来てもまたやられそうでね。剣呑(けんのん)だから夜は寝床の中へ入れて寝ました」
「少し汚いようだぜ」
「だから食べる時にはちょっとお洗いなさい」
「ちょっとくらいじゃきれいにゃなりそうもない」
「それじゃ灰汁(あく/植物を焼いた灰を水に浸して得る上澄み液。アルカリ性を示し、古来、洗剤・漂白剤として、また染色などに用いる)でもつけて、ごしごし磨いたらいいでしょう」


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