「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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《第拾一》 ヴァイオリンはいつから



「君はヴァイオリンをいつ頃から始めたのかい。僕も少し習おうと思うのだが、よっぽどむずかしいものだそうだね」と東風君が寒月君に聞いている。
「うむ、ひと通りなら誰にでもできるさ」
「同じ芸術だから詩歌(しいか)の趣味のあるものは、やはり音楽の方でも上達が早いだろうと、ひそかに恃(たの)むところがあるんだが、どうだろう」
「いいだろう。君ならきっと上手になるよ」
「君はいつ頃から始めたのかね」
「高等学校時代さ。――先生、私のヴァイオリンを習い出した顛末(てんまつ)をお話しした事がありましたかね」
「いいえ、まだ聞かない」
「高等学校時代に先生でもあってやり出したのかい」
「なあに、先生も何もありゃしない。独習さ」
「まったく天才だね」
「独習なら天才と限った事もなかろう」と寒月君はつんとする。天才と言われてつんとするのは寒月君だけだろう。
「そりゃどうでもいいが、どういう風に独習したのかちょっと聞かしたまえ。参考にしたいから」
「話してもいい。先生、話しましょうかね」
「ああ、話したまえ」


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