「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
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映画『吾輩は猫である』 (1936)



「猫」の最初の映画化であるが、大期待して観るとちょっとガッカリ。90分弱では多くのエピソードは盛り込めないし、猫のモノローグは無く人間ドラマのかたわらに吾輩が居るだけという印象。それ以前に吾輩の登場場面が少ないのだ。
日露戦争当時の世相が第一次世界大戦当時 (青島攻撃などが新聞記事で示される) に置き換わり、独仙も三毛子も黒も登場しないなど原作を“読んでから観る”派は辛かろう。
ただ、戦前に撮られているので風景描写などに味がある。この空気感は戦後作品では出せないものだ。このブログでも多くの写真を使用させていただきました。
監督の山本は戦前派の巨匠だが、戦後はプログラムピクチュアが多くこんにちでは“黒澤明の師”と言うほうが通りがいいかも知れない。
・・・この映画の珍野家はセットなんですよね? ホンモノの千駄木邸でロケされたんじゃないよね ?

製作 = P.C.L.映画製作所 (東宝の前身) 
1936.4.14 (昭和11年、東京・日本劇場での公開日)
10巻 2,393m 87分 白黒
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監督 (演出と表記) ...山本嘉次郎
脚本 ................小林勝
原作 ................夏目漱石
撮影 ................唐沢弘光
音楽 ................紙恭輔
美術 ................久保一雄
録音 ................道源勇二

配役

丸山定夫 (主人、珍野苦沙弥)   (吾輩)
丸山はこの作品の前年、山本監督の『坊つちゃん』で山嵐を演じている。“桜隊 (さくら隊)”を率いて演劇慰問活動中、広島で被爆し終戦の翌日に亡くなった。


英百合子 (細君)           千葉早智子 (雪江)


(珍野家の子女)         (おさん = 清)
この映画の珍野家子女は三姉妹でなく二人だけのようだ。


徳川夢声 (迷亭)
夢声は弁士、文筆家、俳優など多くの顔を持つマルチタレントとして今も人気が高い。
藤原釜足 (越智東風)     北沢彪 (水島寒月)
藤原は後に黒澤映画の常連となるなど名脇役として知られる。


清川玉枝 (金田鼻子)  (金田氏)      (金田富子)
鼻子役の清川は付け鼻で熱演。この役で好評を博したという。


宇留木浩 (多々良三平)      (鈴木藤十郎)


清川虹子 (車屋のかみさん)   柳谷寛 (古井武右衛門)

※多くの役者名が不詳です。ご存じの方、どうかご協力下さい。
参考 日本映画データベース http://www.jmdb.ne.jp/1936/bl001440.htm
ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%BE%E8%BC%A9%E3%81%AF%E7%8C%AB%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B

※※2008年5月29日付でアップした、ミモザ様からのメールによって大半のキャストが判明しております。
なお、この場で誤記があるものは、あえて直しておりません。つき合わせてご利用下さい。
なお、おさん役の味のある女優さんの名は不明です。引き続き情報お待ちします。
                       (2010年9月26日 J・KOYAMA)
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この記事に対するコメント


 おさん役は「林喜美子」です。
 たくさんの映画に出ています。
 例えば「花つみ日記」や「夜の鳩」です。
駿河台 | 2017/12/13 5:08 PM
駿河台様、はじめまして。ご教示ありがとうございます。
林喜美子という女優なんですね。個性的な容貌、でも全く知りませんでした。

ネットの東宝資料室を閲覧しましたら、エンタツアチャコの『これは失礼』(1936)から『三十三間堂通し矢物語』(1945)まで40本以上の出演作が分かりました。
でも、この『猫』(1936)はノンクレジットなので、載っていません。
東宝を退社し松竹に移ったか、戦後は溝口の『夜の女たち』(1948)に娼婦役で出ています。
jmdbでは1931年からの出演作が確認でき、最後の映画は京都映画=松竹の『酔いどれ牡丹』前後編(1956)で乳母役のようです。

また何かお気付きの点ありましたら、コメントよろしくお願いします。
J・KOYAMA | 2017/12/17 1:44 PM
拝啓。この映画の配役について感想をひとこと。
主人公苦沙弥先生を徳川無声に、迷亭を丸山定夫にしたほうが
よかったのではと思うのですが、如何?

マキコ・ヨシマル | 2021/06/26 3:04 PM
コメントありがとうございました、長らく書き込めず、すいません。
夢声は花形の弁士出身。
戦後はともかく、トーキー化まもないこの頃はまだその印象が鮮烈に残っていたでしょうから、やはりシャベクリのイメージ優先で、迷亭の役になったのでは。
J・KOYAMA | 2021/10/01 1:25 PM
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