「吾輩は猫である」

  挿画でつづる漱石の猫 I AM A CAT illustrated
<< September 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

《第一》 竹垣の穴


映画(1975)より

 どうも非常に苦しい。そこを我慢してむりやりに這っていくと、ようやくの事でなんとなく人間臭い所へ出た。ここへ入ったらどうにかなると思って、竹垣の崩れた穴から、とある邸内にもぐりこんだ。縁は不思議なもので、もしこの竹垣が破れていなかったなら、吾輩はついに路傍(ろぼう)に餓死したかもしれんのである。一樹の蔭とはよく言ったものだ。
 この垣根の穴は今日(こんにち)に至るまで、吾輩が隣家の三毛を訪問する時の通路になっている。



「一樹の蔭」
『説法明眼論』からの引用。「見知らぬ他人と同じ木の下に宿るのも前世からの因縁による」。つまり、『竹垣が壊れていたために、吾輩がこの家で飼われるようになったのも、前世の因縁だ』という意。

或いは一国に生まれ 或いは一郡に住み 或いは一県に処り、
一樹の下に宿り 一河の流れを汲み
一夜の同宿 一日の夫婦 一所の聴聞
暫時の同道 半時の戯笑 一言の会釈
一坐の飲酒 同杯同酒 一時の同車 同畳同坐 同床一臥
軽重異るあるも 親疏別あるも 皆是れ先世の結縁なり。

 (聖徳太子「説法明眼論」)




第一章 CHAP.1 | permalink | comments(0) | - | - | - |
【前のページ】<< 《第一》 池のそばで | 【TOP】 |《第一》 置いてやれ >>【次のページ】



この記事に対するコメント

コメントする










RECENT COMMENTS
MOBILE
qrcode
PROFILE